刻を告げる時 ときをつげるとき
どれだけの涙が流れたのだろう?
どれだけの悲しみを味わうのだろう?
短く、長い夜が始まる。
耳を塞ぎたくなる程のエンジン音や
指示を出す怒鳴り声に背を向け歩き出すと、
やがて、自分の作り出す足音だけが大きく響くだけの
音の無い空間へと足を進め、1つの扉を開けた。
用意されている席に腰を下ろし、
秘書とし控えているから書類を受け取り目を通す。
空いている席が埋まり、残り2席となると
室内からざわめきは消え、張り詰めた空気が広がりだすと
前代表であるウズミ、現首長のウズミが入室し席に付くと誰ともなく口を開いた。
「以上が、現在起動できるM1の機数です。
尚、途中から参戦をしたGAT−X103バスターはアークエンジェルに
捕虜として乗員していた、ディアッカ・エルスマンが参戦の意思を示し
私が許可を致しました。
それと・・」
席から立ち、手に持った資料に時折視線を移し、正面に座っている
ウズミ・ホムラをまっすぐと見、言葉を作った。
「先ほどの戦闘時にフリーダムを庇ったMSですが、
『ZGMF−X09Aジャスティス』
ZGMF−X10Aフリーダムとは兄弟機です。
装備等はパイロットの意思を尊重し問いはしませんでした。
が、核が使用されていると思って間違いありません」
ZGMF−X09Aジャスティス・ZGMF−X10Aフリーダムは
修理および補充は無く格納庫でシフトダウンをし待機中です。
の声が室内に響くと、うなだれる者・眉間に皺を寄せる者
個々の感情を見せるが、の言葉を止まらず
「連合のMSですが、
戦闘時のデータをエリカ・シモンズに解析をお願いした所、
『GAT−X131カラミティ
GAT−X252フォビドゥン
GAT−X370レイダー』
ナンバーを見て頂きお分かり頂けると思いますが、
3機ともXナンバーのデータを元に作られたMSです。
特徴等は別紙を御参考下さい」
重々しくなる空気の中、
声を止め腰を下ろし首長達の反応を見ていると、
暗く、重くなった空気を切り裂く様にウズミの声が響いた。
「オーブに未来は無い」
告げられる言葉、息を飲み込み目を見張る。
解っていた、予想していたが無意識に考えない様にしていた・・・
自分たちの祖国がなくなる事を・・・
誰もが覚悟を決めなければならない時だった。
次々と語られる言葉に誰もが口を開く事無はない。
名前を呼ばれ、自分の役割を話される。
重くて、押し潰されそうになる・・・
本当に自分でいいのだろうか?
カガリ方が十分にその力を持っているのに・・・
思う言葉は、意思の強いウズミの眼力で粉砕される。
やらなければならない。
それがウズミの頼みなら・・
託されるモノを・・・
重々しい空気が硬い雰囲気を付く上げ、
これから起こる事、己の意思、立場を強くさせた。
緻密なまでに話し合いが終わり、
扉が開かれ、1人、また1人を席を立っていく中
は席から立たずに居た。
この計画で本当にいいのだろうか・・・
他の策があるのではないだろうか?
確かに彼らには責任を負わなければならない事がある
だからと言って、
最後のボタンを押さなければならない事はないのでは?
ウズミの考えに賛同している自分
それなのに、内では否定をする自分がいる。
思いが鎖に変わり、その場に縛られた。
是と答えた、自分がやらなければならない役目もある。
なのに・・・・
いつまでたっても考えが止まる事は無く絡みつく。
「トモエ様?」
会議中背後で秘書として控えていたの声に
顔を動かし反応を見せるが、椅子から立ち上がる事は出来ず
不思議そうに首を傾げて見ると
「そろそろ戻りませんと」
「そうですね・・・」
そうだ、彼が待っているんだった・・・
重たくなった体を、無理やり動かし席から立ち、
机に広げられている資料を片付け、脇に挟むと
背筋を伸ばし自室へと向かった。
今頃、置かれた資料を見て頭を悩ませているかも・・
自分の居ない自室で待っている様にと言い、
机の上には、必要な資料を置いてきた。
後は彼が判断するだけ。
後ろを歩いていたに視線を向けると、
2.3言葉を交わすと一礼しに背を向け歩き出す。
の姿が見えなくなると
自分より大きなドアを開くと、
白い光に照らされている彼が見えた。
「お待たせしました」
笑いながらの挨拶をするが、
揶揄の返事は返らず真剣な表情と眼差しが返された。
ゆっくりとした足取りで来客用のソファーに進み、
腰を下ろす。
封筒に入れられ机に置かれていた資料は、
彼が開け読んだのか、机の上に広げられており
数枚床に落ちていた。
視線を合わし、お互い無言で居るたが
「どう思う?」
先に口を開いたの言葉に、
目を細め刺す様な視線を作る。
「ディアッカはその資料を見て、
私を目の前に置いて、どう思う?」
再び無言になるが
「全てを信じたわけじゃない。
データなんて書き換えができる」
もちろん遺伝子もだ。
真剣身の帯びた声が室内に響く。
「確かにそうね。
じゃぁ、今、ディアッカの前に居る私は?」
ディアッカの声に頷き、更に問いかける。
「わかんねぇよ。
だか、アンタがソウだと言えばそうなんだろうし、
チガウと言えば違うんだろうしな」
真剣みを帯びていた目を閉じ、
体の力を抜くとソファーの背もたれにもたれ掛かった。
考える事を止めたディアッカに声を殺しながら笑い
「ある所にじゃないね、
オーブという国にトモエという名の女の子がいました。
その女の子は、プラントの技術に興味を持ち留学をしたいと我が侭を言い
当時、首長代表だったウズミ様から許可を貰い、
プラント評議会議長だった、シーゲル様に留学許可を頂くと、すぐさまプラントへと行きました」
探るようなディアッカの視線に、
切りの良いところで切り微笑みながら
「昔話だよ。
時間もあるんだし、子守唄代わりにでも聞いてて」
子守唄の例えを実行する様に、ソファーに身を預けたまま
ディアッカは目を閉じ、の昔話に耳を傾けた。
登場人物はディアッカも良く知る人物
そして、ディアッカ自身も体験し記憶にある昔話
疑う余地は無い
全てが本当の話なのだから
昔話が終盤に入った頃、
一定の間隔で聞こえてくる呼吸の音に、
正面に座っていたディアッカを見れば気持ち良さそうに
眠りに入っていた。
戦闘後だもんね・・
音を立てない様に立ち上がり、シーツをかけ、
机の上に散乱している資料を片付け封筒へ入れ
仕事の時に使っている机に置き、PCを立ち上げた。
持って行くモノ、残して行くモノをより分ける。
残すものは機密とされているモノ
必要なものは書き写し持って行く。
カタカタと音を鳴らしフッと時計に目を移すと夜明けまで
数刻しかなかった。
急がないと・・・
残りの時間の少なさに焦り、集中し作業を進めていく。
太陽が地平線から昇り地上を照らす。
太陽の光を受けキラキラ輝いた光はどんな光よりも眩しく綺麗だ。
静まり返った格納庫に慌しさが戻る。
時がきた
夜明け前に目を覚ましたディアッカにコーヒーを入れ、
意識を覚醒させたのか、お互い視線を合わすとディアッカは
に背を向け部屋から出て行った。
ディアッカを見送ったも身支度を整え、必要なものを持ち、
部屋見渡し目を閉じるがドアノブに手をかけ扉を閉めると、
首相達が集まる行政府地下本部へと向かった。
来襲するカラミティ・フォビドゥン・レイダー
聞こえてくるウズミの苦渋の混ざった声
じわじわと押し寄せる刻
モニターに映し出されるM1
出陣するアークエンジェル
青い空と海を裂くように舞うフリーダム
着弾する衝撃
赤い炎を上げるモノや地上
次々に知らせる情報
そんな中、扉を開くエアー音が鳴る。
誰もが音のする方を振り向くと1人の首長とが入室してきた。
「準備整いました。
作業には2時間ほどあればと・・・」
「かかりすぎるな。
すでに時間の問題なのだ・・・」
首長とウズミのやり取りを視界に入れるものの
迫り来る刻を感じ取り、下唇を噛んで耐える。
少し会話が戸切れると
「よい、私も行う」
皆が一斉に息を呑む。
「存続の部隊はカグヤに集結するよう命令を。
オノゴロは放棄する!」
刻はウズミの宣言で来た。
準備の為に慌しく出て行く首長達が居なくなると
ウミズ・ホムラ・・が残った。
俯いてしまったに残っている人物の視線が集まる。
噛んでいた下唇を離すと全身に振るえが来る。
何時までも下を無いれ入るわけには行かない・・・
挨拶をしなければ・・・
自分の役割を果たさなければ・・・
振るえを止め様とするにも
行きたくない・・
離れたくない・・・
一緒に行きたい・・・
本心が沸き出てくる。
でも・・・・・
行かなければ・・・・未来の為に・・オーブの為に・・・・
守りたいと思う全ての人の為に
震える腕を上げ、同時に顔を上げ
あふれ出てくるモノを必死に止め様と歯を食いしばり
目に力を入れ
「行って・・・まい、ります・・」
震える声を絞りだし敬礼を取った。
の敬礼に頷き返すウズミ
目に溜まる涙で視界がぼやける中、
自分の前に人が立っている事を悟り見上げると、
ホムラが目に入った。
「気を付けて行って来い」
額からぬくもりを感じると、髪をすかれる
感じた父としてのぬくもりと優しさに頷き、
溜まっていた涙を全て落とした。
流した2粒の涙は床に落ち、それ以上は流れなかった。
ホムラとの距離を1歩下がり、ホムラとウズミに敬礼を取ると
背を向け、カグヤへと足を進めた。
首長達と・以外知られる事の無いよう、
悟られることの無いよう、戦闘と同時に進められてきた準備を
完璧にする為、用意されているクサナギへと向かう。
集まり、指示を聞いたM1部隊がクサナギへと
仮ドックに入ったアークエンジェルの破損処理の指示を出し。
マスドライバーレールに火薬を付ける。
モルゲンレーテも同様に火薬を設置し後は押されるのを待つ。
今まで過してきた場所が無くなる
寂しいという感情に浸っている暇は無い。
いつ来襲が来るか解らない
短い時間に全てを準備しなければならないのだ。
「M1、全機搭載しました」
「解りました」
誰よりも高い席に座り、報告を待つ。
「さん」
上半身を捻り、控えていたを呼び
「宇宙へ出た後、ドッキング作業へ入るのですが、
少しドックへ行き指示を出しに行こうと思います。
それで・・・・」
申し訳無さそうに言葉を紡ぎながら差し出す紙を
を受け取ると、目を通した。
「たぶん、必要になってくるモノだと思って
事前に調べておいたんです」
紙から視線を上げたに言うと
「解りました。
この資料を参考に決めます」
頷き、脇へと資料を挟む姿にはホッと息をこぼす。
そんな中、敵接近のアラートが機内に鳴り響いた。
「データに機影!
GAT−X131カラミティ
GAT−X252フォビドゥン
GAT−X370レイダーです!」
クルーの声が響く
「くっ・・あと少しなのに・・・・」
映し出されたモニターごしに連合のMSを睨み言葉を零す。
『ラミアス殿、発進を!』
スピーカーから聞こえてくるウズミの声に最後の刻を感じた。
これが最後の会話になる・・・
これが最後の姿・・・
『クサナギの方はどうだ!?』
モニターに映し出されるウズミの姿に誰もが見入った。
「最終調整確認済みです。
カガリを待つだけです・・」
鼻の奥が痛くなり、涙が出そうになるのを無理やり抑える。
もう、泣く事は許されない・・・
最後の刻は少しでも多くの記憶を残そう・・・
誰もが同じ思いを抱いたのかブリッチは音一つ無い
空間になった。
聞こえてくる、ウズミとカガリのやり取りの後、
ウズミの声は聞こえなくなった。
「カガリ様、搭乗されました」
無音のブリッチに静かに響き解る声に、は頷き
「発進準備を!
クルーは衝撃に備え待機」
目の前にある電光表示板が発進を促す
「クサナギ、発進!」
の声と共にクサナギのエンジンに火が入る。
『ファイナル・ローチン・シークエンス、スタート』
最後となる管制官の声に耳を傾け、前進する風景を見入る。
『ハウメアの守りがあらんことを・・・・』
聞こえてくる祈りの言葉に涙腺が緩む。
さいご・・・
最後の刻がくる・・
「フリーダム、クサナギに着艦!」
「カラミティ・フォビドゥン・レイダー尚も追撃」
「ジャスティス、着艦!」
告げられる言葉は耳に届かない・・
見えるのは映し出されたオーブを見続ける。
クサナギがマスドライバーから離れ成層圏に入る頃
映し出された島から、赤色の炎が爆発音と共に噴出した。
最後の刻だ
奥歯を噛み締め、炎の上がるオーブを見続ける・・・
一瞬たりとも見落とさないように・・・
見えなくなっても脳に焼け付けるように見続けていると
モニターはオーブから先に宇宙へ上がったアークエンジェルを映し
自分達が今ドコに入るのかを認識させた。
「ウズミ様、首長様達に良き旅路である事を
心から祈ります」
呟くの声に全クルーが黙祷し祈りをささげるも
目を開ければ現実があるのみ。
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第20話
ようやく宇宙へ進みました。
あっさりしすぎでしょうか?
2004 3 17